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日隅一雄・情報流通促進賞2022大賞決定

今回で10回目を迎える日隅一雄・情報流通促進賞2022の大賞には、連合軍による日本占領軍下の抑圧と被害についての情報を集約した藤目ゆきさんによる書籍「占領軍被害の研究」執筆活動が決定しました。

 

奨励賞には、町役場の公文書を開示請求する手法で調査と取材を継続している屋久島ポスト(共同代表鹿島幹男さん)の屋久島町政をめぐる一連の調査報道活動と、沖縄差別の文脈だけにとどまらない沖縄スパイ戦の実態を明らかにした三上智恵さんの沖縄スパイ戦に関する一連の映画製作・書籍制作・報道と講演等の活動が選ばれました。

 

特別賞には、いわゆる「関西生コン」についての労働組合活動の実態について紹介した竹信三恵子さんの書籍「賃金破壊」の執筆活動と、加計学園事件において政権によって政治が歪められたことや官僚社会の実像を明らかにした前川喜平さんの書籍「権力は腐敗する」執筆と講演活動が選ばれました。

 

表彰式は以下の要綱で6月12日に開催いたします。

【日時】  612日(日)開場12時半 表彰式 13時~14時 

【場所】小石川後楽園涵徳亭

https://www.tokyo-park.or.jp/park/format/access030.html

【参加費用】:無料(どなたでもご参加いただけます)

※当日はYOUTUBEでの配信も予定しています。URLは後日にお知らせします。

 

<大賞>(副賞50万円)

藤目ゆきさん(書籍「占領軍被害の研究」執筆活動)

終戦後、連合軍占領下に置かれていた68ヶ月の間、日本国内では占領軍に起因する事件や事故によって、旧植民地出身者を含む、日本在住の民間人が死傷する事件が無数に発生しました。本書籍は、戦争が終了しても、一般市民生活に対する抑圧と被害が形を変えて続くことを明らかにし、戦争の市民生活へのコストを再認識させ、日本の戦後のあり方を別の視点から問い直しました。断片的にしか知られていなかった、占領軍下の抑圧と被害についての情報が集約されて世に出たことを高く評価しました。

  

<奨励賞>(副賞30万円)

屋久島ポスト(共同代表鹿島幹男さん、屋久島町政をめぐる一連の調査報道活動)

町役場の公文書を開示請求する手法で調査と取材を継続し、国から1500 万円の返還命令を受けた補助金不正請求事件などの問題を報道しました。マスメディアの目が届きにくく、同調圧力の働きやすい小さな自治体の地域政治に対し、健全な緊張関係を住民と政治にもたらすためには行政監視活動は欠かせません。情報公開制度を活用して、機能不全になっている地方自治のあり方を明らかにし、ブログという誰でも簡単に利用できるツールを使い、問題解決のために情報発信を行う取り組みを評価しました。

 

三上智恵さん(沖縄スパイ戦に関する一連の映画製作・書籍制作・報道と講演等の活動)

三上さんは、映画・書籍等を通じて、沖縄差別の文脈だけにとどまらない沖縄スパイ戦の実態を明らかにしました。数々の賞を受賞した映画の製作・公開後も、取材を継続し、新たな証言を引き出し記録にとどめています。とりわけ長年、口を閉ざしていた当事者の証言を時間をかけて引き出し、戦争がもたらす人々の間の分断や、本人の意思とは別に戦争の渦に巻き込まれていくさまを歴史の記録にとどめたことを評価しました。

 

<特別賞>

竹信三恵子さん(書籍「賃金破壊」の執筆活動)

当事者への長期にわたる取材をもとに、本書籍は、いわゆる「関西生コン事件」の本質が、賃金・労働条件向上の具体的な成果を上げた、企業別でない産業別労働組合運動の実態を紹介しています。とかく政治的バイアスがかかった情報が流通しがちな労働組合問題について、何が起こっているのかを明らかにし、産業別労働組合の活動に対する評価を試みています。マスメディアの報道がなく情報が限られる問題について、その情報過疎を埋める取り組みを評価します。

 

前川喜平さん(書籍「権力は腐敗する」の執筆と講演活動)

元文部科学省事務次官である前川さんは、本書籍および講演活動で、加計学園事件において、安倍政権によって政治が歪められたことを明らかにし、さらに腐敗を糊塗するため、真実を明らかにしようとした前川さんに官邸官僚から加えられた恫喝の一部始終を明らかにしています。官邸主導の弊害が問題になる中で、こうした問題に直面する官僚社会の実像を自分自身の経験に基づき、勇気をもって、ユーモアあふれる内容で明らかにしたことを評価しました。