今回で11回目を迎える日隅一雄・情報流通促進賞2023の大賞は、2008年に犬吠埼沖で沈没し、10人以上が死亡した「第58寿和丸」事故についての国の調査結果の不条理さや本当の事故原因を追求した、伊澤理江さんの書籍「黒い海 船は突然、深海へ消えた」執筆活動に決定しました。
奨励賞には、いわゆる「関西生コン」事件で弾圧を受けた人々の日々を追い続け社会から隠された市民の営みを明らかにする土屋トカチさんの映画『ここから 「関西生コン事件」と私たち』制作活動、秘密結社ともいわれ企業内技術者の良心に基づく議論・研さんを行ってきた「現代技術史研究会」の役割を明らかにした平野恵嗣さんの書籍「もの言う技術者たち 現代技術史研究会の70年」執筆活動、日本で発生する人権侵害について国内外で人権問題として発信する藤田早苗さんの書籍「武器としての国際人権 日本の貧困・報道・差別」執筆を含む国際人権活動が選ばれました。
特別賞には、統一教会問題を長年にわたり直接取材し、政治と統一教会の関係やその被害状況をつまびらかにしてきた、鈴木エイトさんの書籍「自民党の統一教会汚染 追跡3000日」執筆を含む統一教会問題に関する取材活動が選ばれました。
表彰式は以下の要綱で6月10日に開催いたします。
【日時】6月10日(土)開場17時15分 表彰式 17時半~18時半
【場所】小石川後楽園涵徳亭
https://www.tokyo-park.or.jp/park/format/access030.html
【参加費用】:無料(どなたでもご参加いただけます)
<大賞>(副賞50万円)
伊澤理江さん (書籍「黒い海 船は突然、深海へ消えた」執筆活動)
福島県いわき市から太平洋に向けて出港し、謎の沈没事故で10人以上が亡くなった2008年の第58寿和丸事故。簡単に忘れてはならない事故であるはずが、多くの人の記憶に残っていません。その事故について、国の事故調査結果の不条理さを当事者や関係者に取材を重ね、資料を収集して明らかにし、事故調査の不条理さだけでなく本当の事故原因は何かを追求する取材と執筆活動を評価しました。
<奨励賞>(副賞30万円)
・土屋トカチさん (映画『ここから 「関西生コン事件」と私たち』制作活動)
日本の戦後の労働運動の中では最も過酷な弾圧事件で知られる関西生コン事件については、多くの主要メディアが警察発表にもとづく報道を行っており、労働運動としての評価を避けています。弾圧を受けた当事者、家族、関係者などが、過酷な事件によって分断される中で、自らの正しさを信じる人々の日々を追い続け、社会から隠された市民の営みを社会全体で共有していく本作品を評価しました。「ここから」というタイトルが私たちや未来に問いかける作品です。
・平野恵嗣さん (書籍「もの言う技術者たち 現代技術史研究会の70年」執筆活動)
高度経済成長と公害という近代社会の矛盾を、技術者がその技術の社会的影響を自らの良心のもとで議論・研さんを行ってきた「現代技術史研究会」。本書籍は、技術が社会に与える影響を人間として考える技術者が、企業の追求する利益とのはざまで何を考えてきたのか、社会に何を問うてきたのかを、そこにかかわった企業内技術者らが実名で語り、秘密結社ともいわれた研究会の役割を丁寧に明らかにしています。今、日本学術会議のあり方が政治問題になり、科学技術の社会的影響について専門家の良心が問われる中、この本の果たす役割を評価しました。
・藤田早苗さん (書籍「武器としての国際人権 日本の貧困・報道・差別」執筆を含む国際人権活動)
日本で人権侵害がさまざまなレベルで発生していますが、それらを人権侵害として日本人自身が認識できていないことがあります。それらの問題について、国際社会で当たり前のように論じられている「人権」から焦点をあて、人権問題として国連など国際社会に発信し、日本の問題を人権問題として国内でも焦点を当てようとする個人の活動は極めて高い意義を持ちます。その活動の一端として「武器としての国際人権」を執筆し、人権とは何かを内外に広く知らせようとした活動もあわせて評価しました。
<特別賞>
・鈴木エイトさん
(書籍「自民党の統一教会汚染 追跡3000日」執筆を含む統一教会問題に関する取材活動)
安倍元総理の殺害によって統一教会問題に改めて注目が集まりましたが、一貫・継続して統一教会問題を長年にわたり直接取材するだけでなく、統一教会関係に接点のある政治家の情報を収集・蓄積し、政治と統一教会の関係をつまびらかにしました。また、被害者とその関係者に取材し、その活動実態を明らかにする活動が、今般の統一教会問題で否定できない事実として提示され、この問題を大きく動かしてきました。その活動は社会的に大きな影響を与えましたが、本賞としても特別にその活動を顕彰したく表彰します。
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